こころオフィス・盛田~うつ病,双極性障害のカウンセリング

パワハラ等のハラスメントで,加害者側にパーソナリティ障害が疑われる場合,前回書いたようにルール作りなどで枠組みを明確にしていくことが,ひとつのポイントになりますが,ルールを守ってもらう立場の被害者側にも,心の強さが必要になってきます。

境界性/自己愛性パーソナリティ障害の場合,ルールなどの枠組みを作られることに対して,感情的に反応したり抵抗したりします。パーソナリティ障害というのは,深層心理学で「自我」と呼ばれる心の枠組みが脆弱なため,外側のルールなどの枠組みを守ることが難しいのが特徴です。境界性/自己愛性の場合は,特に対人関係に関する困難が大きいので,対応が難しいことが多いです。

一対一の関係でルール作りを行うのは,相手が激しく反応してしまう可能性があるので,できるだけその関係に権威性をもつ第三者のもとで書面にして明記するところまで行う方が適切です。そして,相手がどんな理由をつけてその枠組みを崩そうとしても,いったん決めたルールは厳格に適用するという意志をもつことが大切です。しかし,一人でそれをやりきることも大変だと思います。

枠組みに対しては,加害者側の上司や先輩などの権威性をもつ第三者が有効ですが,心理的な面でも専門家の支えが必要になります。カウンセリングで気持ちを立て直しながら,心の強さを保てるようなサポートを受けて,被害に対処していくことが重要です。
パワハラ等のハラスメントの加害者側にパーソナリティ障害と思われる特徴が見られる場合,その心理的な被害が大きいようなら,物理的に距離を置くのが一番です。「触らぬ神に祟りなし」というわけですが,物事そう単純にもいかない場合も多いでしょう。

職場のことなら,そう簡単に異動や転職ができるというわけでもないですし,家族になっていたりするとそう簡単に離婚できるというわけでもありません。物理的に距離を置けない場合は,心理的な距離を置くようにすることをお勧めします。境界性/自己愛性パーソナリティ障害の場合,この心理的な距離をおけないことが特徴ですので,周囲から枠組みを作っていく必要が出てきます。

枠組みというのは,ルールです。一番強力なのは,ストーカー規制法のような法律で,罰則を伴うなど力を伴うために,パワハラの加害者などには有効に働きやすいと言えます。会社だと,社内規定などを明確にするとか,ハラスメントをなくす取り組みをするなど,組織的に権威性を伴う方が有効です。家庭でも,加害者側の親とか先輩などと権威性を伴うルール作りをする方が有効です。

ただ,境界性/自己愛性パーソナリティ障害の場合,このような枠組みをかけられるのをひどく嫌がり,その隙間を探すようなことをしがちです。ルールは厳格に適用しないとなし崩しになる恐れがあり,適用する側の心理的な枠組みの強さが重要になります。
昨今問題になることが多いパワハラを含めて,ハラスメントの加害者側にはパーソナリティ障害やそれに近いパーソナリティ傾向をもつ人が多く見られます。被害を受けた時の対策や,うつ病などにならない予防のためにも,特徴を知っておくことは大切です。

パワハラの加害者側には,自己愛性パーソナリティ障害が疑われる人が多くの割合で含まれています。パーソナリティ障害と言わないまでも,自己愛に関する何らかの傷つきやユング心理学でいうコンプレックスが無意識レベルで働いていると考えられます。マスコミの取材などで,非常に横柄な態度や上から目線といった対応をとる人が多いのは,自己愛の傷つきの裏返しと推測されます。

DVを含むモラハラの加害者側には,境界性パーソナリティ障害が疑われる人が多いと言えます。これは,対人関係における不安定なイメージの中で,肯定と否定が極端に入れ替わったりするため,否定に入った時に人格否定のような形で相手を攻撃してしまうことによります。幼少時の親との関わりにおける傷つきや不安が背景にあることがほとんどで,期待はずれで責めている感じです。

対処の基本としては,どちらも理不尽極まりないという言動をとったりするので,できる限り心理的な距離をおけるように線引きやルール作りをすることが挙げられます。可能なら物理的に離れる方が安全ですが,難しい場合も多いので次回に詳しく書きます。
前回,パワハラ等のハラスメントによる「怒り」の感情が,うつ病に関連していることを書きました。社会的・心理的に立場が上の人が加害側になることがほとんどなので,被害側の人は声を挙げづらくなり,まして「怒り」の感情を出すことは困難といえます。

深層心理学的アプローチのところでも書きましたが,カウンセリングでは抑圧された「怒り」を正当なものとして扱い,「怒り」にていねいに気づき表現できるようにお話を聴いていきます。それに加えて,パワハラ等のハラスメントでは,ストレス状況も改善できるように,「環境調整」と呼ばれる具体的な対処についても考えていくことで,心理的なダメージの軽減を図っていきます。

具体的な対処というのは,会社での話ならハラスメントの窓口を確認したり,プライベートな関係なら味方になる人とつながるといったところから始めますが,実際に行動を起こすかどうかはあまり問いません。うつ状態では,行動を起こせるエネルギーが戻らないと難しいということもありますが,対処する具体的なイメージをもつことで,正当に「怒り」を向けることが目的になります。

もちろん,実際に行動を起こして状況が改善できるなら,それに越したことはありませんので,その後押しもしていきます。パワハラであれば,被害を受けた人が奪われた深層心理的なパワーを取り戻し,パワーを自覚的に用いることはとても有効に働きます。
うつ病になる要因は様々ですが,ストレスに対して適切に対処できずに自律神経や心のバランスを崩すというのが,ひとつの大きな要因と言えます。ストレスの多くは人間関係によるものですが,中でもパワハラ等のハラスメントは対処が難しいと思います。

ハラスメントという言葉は,最近は様々な形で使われますが,受けている本人が不快であったり不利益を被ったり,心を傷つけられたりする行為(言動・行動)を指します。ハラスメントの概念は,アメリカなどで問題視され広がったものですが,パワーハラスメントという用語は日本で生まれたようです。「パワー」という力の行使である点で,上下関係の影響が大きいと考えられます。

「パワー」といっても,上司と部下などの社会的なものもありますし,いじめやDVなどに見られる精神的な力関係,多数派と少数派という数の力などもあります。いずれにしても,力の行使を受けた方は何らかの被害感情をもちます。多くの場合,そこには「怒り」の感情が伴いますが,その「怒り」が無意識に抑圧されたりすることによって,うつ病にまで至るケースがよく見られます。

以前にも,深層心理学としての文脈で,うつ病と「怒り」の関連について書きましたが,パワハラ等のハラスメントで難しいのは,その力関係によって「怒り」をひたすら我慢したり,自分の方が悪いように感じたりして,適切に表出できない点にあります。
双極性障害に似た気分の浮き沈みをもつ人の中に,パーソナリティ障害をもつ人が含まれます。カウンセリングでも,初期には判別が難しいことが多いですが,経過をみていくと異なる特徴が見えてきます。今回は,「自己愛性パーソナリティ障害」を挙げます。

「自己愛性パーソナリティ障害」をもつ人も,対人関係に伴う気分の浮き沈みが大きいので,双極性障害との判別が難しいことが多くあります。自己イメージが肥大化しやすい点でも共通性が見られるので,判別は境界性パーソナリティ障害よりも難しいと思います。気分の変化を経過で見ていっても,波として感じられるところも似ていて,感覚的には少し違うのですが表現しづらいです。

違いとしては,ストレス状況における気分の落ち込みの様子と,それに伴う対人イメージのありようが特徴的です。自己愛性パーソナリティ障害の場合,相手に対する認知が他罰的で,相手のせいで自分が不利益を被っているという被害的な訴えが多くなります。双極性障害も,自己愛の傷つきがあると似ている場合がありますが,内省する力があり自分を改善しようとする感じがあります。

自己愛性パーソナリティ障害も,カウンセラー/セラピストに対して不安定な対人関係イメージをもちますが,信頼関係を築きづらい点で困難例の割合が多いと言えます。内省する力が乏しいので,なかなかカウンセリングが深まらないという経験をしがちです。
双極性障害に似た気分の浮き沈みをもつ人の中に,パーソナリティ障害をもつ人が含まれます。カウンセリングでも,初期には判別が難しいことが多いですが,経過をみていくと異なる特徴が見えてきます。今回は,「境界性パーソナリティ障害」を挙げます。

「境界性パーソナリティ障害」をもつ人は,対人関係で主に相手側のイメージが安定せず,理想化したり全否定したりという中で,気分が不安定になります。対人関係のエピソートが語れるぐらいの水準の人であれば,その内容と反応を聴いていけば判別はそれほど難しくないと思いますが,自分の気分に焦点が当たりすぎて混乱すると,エピソードがあまり出てこないので難しくなります。

基本的には,気分の変化を経過として見たときに,波としてイメージできるかどうかがひとつのポイントです。双極性障害の場合は,不安定になってはいても基礎に波がある感じはあります。境界性パーソナリティ障害の場合は,折れ線グラフのよう直線的な感じという違いがあります。その振れ幅が大きいため,経験が少ないとカウンセラー/セラピストでも翻弄されることが多いのです。

特徴的なのは,カウンセラー/セラピストに対しても不安定な対人関係イメージをもつ点で,境界性パーソナリティ障害の場合のカウンセリングは,困難例として報告されることが多くあります。カウンセリングの実際については,改めて書きたいと思います。
双極性障害(特にⅡ型)のような気分の浮き沈みが見られる人の中に,パーソナリティ障害と思われる人が一定の割合で含まれます。パーソナリティ障害が基礎にあって,症状として双極的な気分の波が生じているので,カウンセリングの方向性も異なります。

パーソナリティ障害というのは,大まかに書くと,主に環境的要因(家族関係など)を背景に健常なパーソナリティ(人格)形成が阻害されたことにより,対人関係や社会生活上の支障が生じている症状を指します。パーソナリティ障害というカテゴリーの中にも,たくさんの種類がありますが,双極性障害と特に混同されやすいのが,「境界性」と「自己愛性」のパーソナリティ障害です。

DSM-5という精神医学の診断基準では,パーソナリティ障害はA・B・Cの群に分類されており,「境界性」と「自己愛性」はどちらもB群に入っています。B群は,主に情緒面の不安定さという共通性でまとめられているので,気分の波も大きい場合が多いのですが,「境界性」と「自己愛性」は特に対人関係における認知の不安定さから,気分の浮き沈みにつながりやすいと言えます。

医療機関やカウンセリング機関に訪れる場合も,抑うつ気分などが主訴になることがほとんどなので,パーソナリティ障害が見逃されがちです。次回からは,「境界性」と「自己愛性」それぞれのパーソナリティ障害について,取り上げていきたいと思います。
自律神経のバランスが崩れると,心身の様々な症状につながります。自律訓練法は,自律神経のバランスを整えるのにとても適していて,症状の緩和・改善やリラクセーションによる日常的なセルフケアとしても,短時間で手軽にできるものとして有用です。

自律訓練法は,「気持ちがとても落ちついている」という背景公式と呼ばれる言葉を枕詞のように繰り返しながら,「右(左)手が重たい」「右(左)足が重たい」といった第一公式(重感),「右(左)手が温かい」「右(左)足が温かい」といった第二公式(温感)という順番で,第六公式までありますが,リラックスした体の状態になるように暗示的な言葉を重ねて,全身に広げていきます。

身体感覚に注意を向けることは,催眠誘導の効果もあり,ゆったりした声かけのリズムが加わるとさらに催眠療法的になりますが,独りでやるときにも充分に変性意識状態という催眠状態に入ることができます。このため,自己催眠の効果も優れているので,自律訓練法を一通りやった後に,決めておいた自己暗示のイメージをしていったり,声かけをしていったり,様々な応用が可能です。

感覚をつかむまでは,ある程度の慣れが必要ですので,最初は専門家に教わることをお勧めします。基本は一緒ですが,専門家がそれぞれ身につけやすいように工夫をしていて,当オフィスでも呼吸法やその人が入りやすいイメージなどを加えて行っています。
様々なストレスにさらされることが多い私たちは,その反応として緊張状態になることが多いため,自律神経のバランスを崩しやすいと言えます。自律神経のバランスを整えるためには,リラクセーションを身につけることがセルフケアや予防に大切です。

リラクセーションとひとくちに言っても,その方法はとてもたくさんありますが,自律神経のバランスを整えるのに,カウンセリングでは古典的な方法とも言える,「自律訓練法」があります。「自律訓練法」は,ドイツの精神科医シュルツによって,1932年に創始されました。心身を瞑想のようなリラックス状態にして自律神経を整えることにより,精神症状の緩和にも有効に働きます。

「自律訓練法」の優れている点は,リラックス状態を身体感覚から導いていくところです。僕も緊張しやすいので経験がありますが,緊張しやすい人がリラックスしようと頭で思っても,なかなか難しいのです。手や足が「重たい」「温かい」といった自己暗示的な言葉を繰り返すのですが,リラックスしたときの体の状態に誘導することで,心をリラックスさせるという逆転の発想です。

「自律訓練法」の情報は,ネットでも書籍などでもたくさんありますが,声かけのトーンやリズム,タイミングなどは専門家から受ける経験を通して身につける方が確実です。自己催眠の一種でもあるので,応用を含めて活用していただきたいと願っています。