こころオフィス・盛田~うつ病,双極性障害のカウンセリング

うつ病に家族関係の要因がからみあっていることがあり,家族関係の中でうつ病がある種の役割を果たしているような場合,なかなか改善しないケースがあります。このような場合,クライエント(相談者)と家族との関係性をていねいに扱う必要があります。

家族療法の実践から生まれたシステム論は,家族関係をひもとく上でとても有用だと感じています。家族全体をひとつの有機体のようなシステムとして捉え,そのシステムに生じている歪みが家族の主に弱い立場の人に表れるという考え方です。多くは,子どもに表れて不登校やひきこもりなどにつながりますが,その構造が大人になっても維持されると,うつ病という形でも表れてきます。

例えば,疾病利得と呼ばれる,病気であることが本人にとって心理的な渇望を満たすということがあります。うつ病であることで心配されたりやさしくされることが,本人がケアされたい渇望を満たしていると,うつ病が治ることが弊害になるため,なかなかよくなりません。その背景に,ケアすることが自分の存在意義になってしまっている家族がいる場合,共依存のようになりがちです。

子どもの心理的な成長が後れる要因として,親の過干渉がよく見られますが,子どもが成長して自分でできるようになると,親の存在意義が無意識に脅かされるのです。そういうシステム構造の中では,子どもがケアされる側でいることが無意識に強いられます。
うつ病には不眠症が伴うことがとても多く,不眠症のケアは重要な要素なのですが,意外に無頓着な方が多いと感じています。睡眠環境や生活習慣を見直してみることも,不眠症のケアには有効ですので,今回はそのあたりのことについて書きたいと思います。

まず,睡眠時間ですが,何時間くらい眠ればいいのかと聞かれることも結構あります。しかし,それには個人差が結構あって一概には言えないことと,睡眠の質が悪いと何時間寝ても足りない感じになります。睡眠の質は,目覚めたときの熟睡感やスッキリした感じなどの感覚的なものが指標になります。枕が合っているかや寝具の心地よさも影響しますので,相談してみることも大切です。

自律神経の交感神経が刺激されると,入眠困難につながりますので,就寝前の1~2時間ぐらいは食事や入浴まで済ませて,リラックスして過ごすようにしましょう。視覚的な刺激や強い光も交感神経を刺激するので,パソコンやスマホなどは控えることをお勧めします。部屋の照明は抑えて,できれば間接照明にして,軽いストレッチをしたり,日中の体の緊張やコリをほぐすようにします。

眠れないというのでよく話を聴くと,就寝する直前までパソコンで仕事など神経を使う作業をしているという人も結構おられます。睡眠を無駄な時間と感じている場合も不眠症につながります。眠る心地よさを味わうような感覚をもつのが,改善のポイントです。
前回までは不眠症について書きましたが,概日リズム睡眠障害という睡眠障害も,不眠症の中の入眠困難と関連してきます。概日リズム睡眠障害というのは,24時間の周期的な睡眠リズムが崩れていくことで,入眠困難が生じたり,昼夜逆転になったりします。

概日リズム睡眠障害は,基本的に睡眠リズムが後の方にズレていくため,起きる時間が遅くなっていき,朝起きれないために遅刻を繰り返したり,頑張って起きても体が思うように動かないとか頭がボーッとするなどして,子どもの場合は不登校につながっていくことが多くあります。入眠困難によって睡眠不足が続くことで悪循環につながり,うつ病のリスク要因にもなってしまうのです。

睡眠リズムは25時間程度と言われ,目から朝日の刺激が入ることでリセットされて,24時間周期が保たれると言われています。このため,医療機関では光療法という強制的に光を浴びせる治療法があります。それほど重度でなければ,寝る前にブルーライトを目に入れないようにして,朝起きたらカーテンを開けて外の光を浴びたり,外を少し散歩したりすることで,改善が見込めます。

昼夜逆転までズレてしまったなら,元に戻そうとするよりはズレる方向にあと半周させる方が体の自然には合っています。時差ボケに対処する要領で,頑張って眠らずに日中を過ごし,夜になってから寝る方が合わせやすいと思いますので,試してみてください。
不眠症の主な症状である,入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒について,前回は入眠困難について書きましたが,今回は中途覚醒・早朝覚醒について書きたいと思います。これらは,うつ病になると増化する傾向にあり,入眠困難から移行したり加わったりします。

中途覚醒と早朝覚醒は,基本的には類似していますが,中途覚醒は本人は覚えていないこともありますが悪夢などで目覚めることが多く,仕事や人間関係等のストレスが関与していると考えられます。早朝覚醒は,仕事などに出かけることに関する不安や緊張が大きな要因と考えられ,過眠の傾向で寝過ごした経験の裏返しの場合もあります。いずれも,経緯や日中の様子が参考になります。

不眠症のタイプと,要因としてどのようなところが中心となっているかは,カウンセリングを進める上でのヒントになります。うつ病の症状として精神活動が乏しくなるため,漫然と傾聴や共感をするだけでは話題があまり展開せず,悪循環からの打開点を見つけるのが難しいことが多いです。不眠のつらさを受けとめながら,ポイントを絞った具体的な質問をしていくことも必要と言えます。

その他,睡眠障害の領域になると基本的には医療での治療が中心になると考えられますが,過眠傾向による概日リズム睡眠障害などについては,不登校やひきこもりなど,社会適応上の問題につながるケースが多いので,私見を含めもう少し書きたいと思います。
眠っている間に,脳内では日中の様々な情報を整理しているとも言われ,良質な睡眠はストレスを軽減する効果も高いと考えられます。眠れないというのは本当につらく,それだけで大きなストレスになりますし,精神症状の改善を妨げ悪化のリスクを高めます。

前回書いた,入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒の中で,入眠困難は寝つきが悪いという軽度を含めると,多くの方が経験していると思います。僕も経験することが時々ありますが,日中のストレスが残っていると,その出来事に関することが頭の中でグルグル回ってしまい,興奮や緊張が高まり自律神経が交感神経優位になります。こうなると,眠れる状態になかなか体が向かっていきません。

強いストレスがかかったり,ストレスの蓄積が解消されていないとこういう状態になりやすいので,眠りやすくなるためには,自律神経を副交感神経優位に向けることが重要です。食事や入浴,交感神経を刺激しないような生活習慣の見直しも大切ですが,カウンセリングとしては,自律訓練法という技法を用いて自律神経のバランスを整え,リラクセーションを兼ねて身につけていきます。

また,なかなか眠れないと感じることで不安が高まり,眠らなければと焦ることが悪循環を引き起こします。交感神経が優位になっていることで,不安や焦りを喚起しますので,この悪循環を予防するためにも,自律訓練法やリラクセーションは有効と言えます。
うつ病になると,多くの場合に不眠が表れてきます。逆に,睡眠障害によって睡眠不足等が重なることで,うつ病になるリスクが高まります。睡眠の量と質のバランスがとれていることは,精神的な健康を保つ上でもうつ病のカウンセリングでも重要になります。

「睡眠障害」という場合は,睡眠時無呼吸症候群やレストレッグス症候群(むずむず脚症候群),身体疾患や薬物療法の影響などが考えられますので,睡眠外来などで医学的な治療を受ける方が適切な場合があります。カウンセリングの場合は,自律訓練法などのリラクセーションを自分でできるようにしたり,傾聴・共感によるストレスの軽減やストレスの受け流し方の助言等が中心です。

うつ病で生じる不眠症は大きく分けて,入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒に分けられます。入眠困難は,寝つきが悪くなかなか眠りにつけない症状で,中途覚醒は,深夜に目が覚めてしまいその後は眠れなくなる症状,早朝覚醒は,起きるべき時間より大幅に早く目が覚めてしまう症状です。また,入眠困難では,概日リズム睡眠障害という昼夜逆転状態が影響している可能性も考えられます。

不眠症/睡眠障害になる要因は様々で,快適な睡眠のための生活習慣や環境をチェックして,改善することもカウンセリングの中で必要になります。夢を覚えていればその内容や,覚えていない場合は感覚だけでも,ストレスの方向性を見立てる参考になります。
前回,アダルトチルドレンを中心に取り上げて,うつ病などの精神疾患になってしまう可能性やカウンセリング/心理療法の方向性について書きました。今回は,HSPを中心に取り上げ,精神疾患との関連やカウンセリング/心理療法について書いていきます。

アダルトチルドレンとHSPはともに,精神疾患というほどではないけれど生きづらさを感じている人たちに当てはまりますが,HSPの場合は,生まれつきまたは家庭環境等の影響で感受性が非常に高い状態にあります。他の人たちからすればささいなことで,気にしなければいいと思うようなことでも,アンテナの感度が高いので様々な刺激が苦痛になり,ストレスを感じやすいのです。

重度だと,自閉症スペクトラム障害と重なる部分も大きくなりますが,感受性の高さだけでは発達障害とは言えないので,安易に発達障害と結びつけることは適切ではありません。とは言え,生きづらさという意味では程度の差こそあれ,共通する部分は大きいと言えます。その生きづらさが高じて,統合失調症やうつ病,パーソナリティ障害などに発展するリスクも大きいと考えられます。

カウンセリング/心理療法の方向性としては,アダルトチルドレン同様,家庭環境や成育過程でのトラウマの影響があれば,それが中心になります。一方,発達障害的な特性の側面は,その特性ゆえのストレスを低減させるような環境調整などの工夫が重要です。
アダルトチルドレンやHSPといった生きづらさを抱えている人は,そうでない人に比べるとうつ病などの精神疾患になってしまう可能性が高いと言えます。今回は,アダルトチルドレンを中心に取り上げて,カウンセリング/心理療法について書いていきます。

アダルトチルドレンは,子どもの頃の家庭環境に何らかの要因があると考えられるため,それが虐待などトラウマになるレベルであれば,診断名としてはパーソナリティ障害に該当する場合も結構あります。命に関わるような虐待などでは,PTSDや解離性同一性障害(いわゆる多重人格)も充分あり得ますので,トラウマに対するカウンセリング/心理療法が中心になることが多いです。

もともと,アダルトチルドレンの概念は,これらの診断名がつくような病態水準ではなかったと思いますが,自分がアダルトチルドレンだと感じている人の中には,診断名がつくような方も結構おられます。また,虐待的な家庭環境で育つことによって,発達障害に類似した状態像を呈することが多くあり,家庭環境の情報や本人がどのような経験をしてきたのかを振り返ることも大切です。

ただし,トラウマによる傷つきが深い場合には,安易に振り返ることは悪化する危険を伴いますので,長期的なカウンセリングのもとで,どのような状態にあるのかの見立てを丁寧に行いながら,安全な形でひもといていくような取り組みが重要になってきます。
アダルトチルドレンやHSPという言葉は,クライエントさんが使うことは多いのですが,診断名ではなく判断基準のあいまいさもあるので,専門家としては積極的には使いません。しかし,自分の生きづらさを表すのにピッタリな場合が多いとも感じています。

アダルトチルドレンは,元はアルコール依存症の親という家庭環境で育ち,トラウマ的な傷つきを抱えたまま大人になったために,生きづらさを抱えている人のことでしたが,のちに虐待や機能不全家族といった家庭環境の問題全般に広がりを見せています。生きづらさからストレスを感じることが多く,成長する過程でも抑うつ傾向が続いていき,うつ病になる割合も高いと考えられます。

HSPは,"Highly Sensitive Person"の略で,「とても敏感な人」と訳され,環境の刺激に対して高い感度をもつ繊細なタイプの人を指します。基本的には生まれつきの特性ということで,発達障害傾向と重なる部分もあり,幼少時の家庭環境の影響による後天的な特性もあり得るので,アダルトチルドレンとの関連も高いです。アダルトチルドレン同様,うつ病のリスクは高いと言えます。

僕自身,HSPは当てはまる部分も多いと感じますが,生きづらさを感じている人にとっては,関連書籍などを読んで自分のことを理解してもらえたように感じ,ある種の流行にも発展します。それだけ,生きづらさは周囲に理解されづらいということでしょう。
発達障害という概念は,今ではずいぶん広まってきて,子どもの時期から指摘されて支援を受けたり,周囲の理解も得られたりします。しかし,発達障害という概念がなかった時代に成長してきた大人は,特性の理解もないまま生きづらさを抱えやすくなります。

発達障害という概念の広がりは,理解不足による偏見や差別を受けるといった,ある種の弊害もあるのですが,漠然とした生きづらさを子どもの時から感じ続けることになり,慢性的な抑うつ状態とも言えます。その特性から周囲とうまく関わりをもてず,いじめに遭ったり孤立から不登校やひきこもりになったりした経験をもつ人も多いので,うつ病になりやすい要素をもっているのです。

ただし,前回も書きましたが,自閉症スペクトラム障害やその傾向が強い人のうつ病というのは,典型的な臨床像と異なる側面があります。例えば,抑うつ気分を訴えているのに,自分の趣味の活動をする元気はあるという,ディスチミア親和型と呼ばれるタイプや,環境に対するストレス反応としての感情にうまくアクセスできず,身体症状中心になる仮面うつ病というタイプがあります。

環境からの刺激に敏感に反応しやすく,それ自体がストレスになっていることも多いので,職場などの環境を整える環境調整が奏功することもよくあります。環境調整は,物理的なことも大切ですが,特性に応じた周囲の理解を得ていくことも重要になります。