こころオフィス・盛田~うつ病,双極性障害のカウンセリング

パーソナリティ障害は,深層心理学でいう「自我」の脆弱さが共通していますが,「自我」の再形成が始まると,少しずつ葛藤を抱えられるようになります。葛藤を抱えられることにより,抑うつ感が強くなるのですが,カウンセリングとしては順調な過程です。

境界性パーソナリティ障害の場合,対人関係における相手の理想化の失望という葛藤を抱えられるようになることがひとつの目標です。失望を抱えることは,相手に向けていた「怒り」を自分の中にとどめることでもあります。無意識に自分本位な理想化イメージを相手に押しつけて,失望から相手を傷つけたという「罪悪感」が生まれますが,それを一緒に抱えるように関わっていきます。

自己愛性パーソナリティ障害の場合,自分自身に対する理想化の失望という葛藤を抱えられるようになることがひとつの目標です。この場合,自分自身に対する失望を,「怒り」として自分の中にとどめることになりますので,非常に強い抵抗を示します。自分に対する失望を抱えることで「責任感」が生まれてくるので,その人格的成長に対して一緒に認められるように関わっていきます。

この段階での抑うつ感は,幼少時のトラウマ的な体験とつながっているので,セラピストとの関係性が不安定になり中断になることもあります。セラピストとしては,そのトラウマ的な傷つきをいたわるように存在し続ける「器」になることが重要と言えます。
パーソナリティ障害のカウンセリングは,前回書いたような「自我」と呼ばれる心の枠組みの脆弱さを支えながら,ある種の形成不全を再形成するようにアプローチします。その過程は「育て直し」とも呼ばれ,年単位のカウンセリングの継続が必要になります。

境界性パーソナリティ障害の場合,対人関係における理想化とその失望による全否定という極端さがあり,0か100かという認知の仕方が強いので,話を聴きながらその間の10とか90などにとどまれるように一緒に見ていきます。「自我」の水準というのは,葛藤を抱えられるかどうかがひとつの基準ですので,好きと嫌いといった反対の感情等が混在できるように進めていきます。

自己愛性パーソナリティ障害の場合,対人関係において理想化が相手ではなく自分に向いています。自分自身の理想化に対して,葛藤を抱えることができないため,その理想化を脅かす相手に対して否定したり排除したりします。葛藤を抱えられるようにする方向性は,境界性と同じですが,自分自身への失望を抱えることになるため,それをもたらすセラピストを排除したくなりがちです。

パーソナリティ障害は,乳幼児ぐらいの小さい頃のトラウマ的な親子関係が背景にあることが多く,深い心の傷つきを抱えていると言えます。上記のようなアプローチは「介入」に当たりますが,その前提として安定した関係性を継続的に築くことが重要です。
パワハラ等のハラスメントにおいては,加害者側にパーソナリティ障害かそれに類する要因が考えられることが多いのですが,パーソナリティ障害をもつには,幼少時の家庭環境の問題が強く影響しているため,継続的なカウンセリングが必要と考えられます。

ここでは,境界性/自己愛性パーソナリティ障害について書きますが,一部を除いてパーソナリティ障害の人が自らカウンセリングに訪れることは少なく,何かトラブルが起こって周囲の人が困って行かされる形になることも多くあります。加えて,前回書いたような心の枠組みの脆弱さから内省力が弱く,来談を継続する動機にも乏しいので,中断事例も多く報告されているのが実情です。

このため,カウンセリングでは深層心理学で「自我」と呼ばれる,心の枠組みを少しずつ取り戻していくことが中心になります。そのためには,脆弱な心の枠組みを補う外側の枠組みが必要で,カウンセリングの時間や場所といった枠組みを守れるようにし,必要に応じてそこからの逸脱行動について,ルール作りをするということを,言葉の説明を含めて丁寧に進めていくことが重要です。

クライエント本人は,無意識レベルでセラピストから無条件の承認を得ようとするので,そういった枠組みに抵抗を示しますが,その枠組みの中でセラピストが「無条件の肯定的配慮」と呼ばれる関わりを続け,安定した関係性を築いていくことが不可欠です。
パワハラ等のハラスメントで,加害者側にパーソナリティ障害が疑われる場合,前回書いたようにルール作りなどで枠組みを明確にしていくことが,ひとつのポイントになりますが,ルールを守ってもらう立場の被害者側にも,心の強さが必要になってきます。

境界性/自己愛性パーソナリティ障害の場合,ルールなどの枠組みを作られることに対して,感情的に反応したり抵抗したりします。パーソナリティ障害というのは,深層心理学で「自我」と呼ばれる心の枠組みが脆弱なため,外側のルールなどの枠組みを守ることが難しいのが特徴です。境界性/自己愛性の場合は,特に対人関係に関する困難が大きいので,対応が難しいことが多いです。

一対一の関係でルール作りを行うのは,相手が激しく反応してしまう可能性があるので,できるだけその関係に権威性をもつ第三者のもとで書面にして明記するところまで行う方が適切です。そして,相手がどんな理由をつけてその枠組みを崩そうとしても,いったん決めたルールは厳格に適用するという意志をもつことが大切です。しかし,一人でそれをやりきることも大変だと思います。

枠組みに対しては,加害者側の上司や先輩などの権威性をもつ第三者が有効ですが,心理的な面でも専門家の支えが必要になります。カウンセリングで気持ちを立て直しながら,心の強さを保てるようなサポートを受けて,被害に対処していくことが重要です。
パワハラ等のハラスメントの加害者側にパーソナリティ障害と思われる特徴が見られる場合,その心理的な被害が大きいようなら,物理的に距離を置くのが一番です。「触らぬ神に祟りなし」というわけですが,物事そう単純にもいかない場合も多いでしょう。

職場のことなら,そう簡単に異動や転職ができるというわけでもないですし,家族になっていたりするとそう簡単に離婚できるというわけでもありません。物理的に距離を置けない場合は,心理的な距離を置くようにすることをお勧めします。境界性/自己愛性パーソナリティ障害の場合,この心理的な距離をおけないことが特徴ですので,周囲から枠組みを作っていく必要が出てきます。

枠組みというのは,ルールです。一番強力なのは,ストーカー規制法のような法律で,罰則を伴うなど力を伴うために,パワハラの加害者などには有効に働きやすいと言えます。会社だと,社内規定などを明確にするとか,ハラスメントをなくす取り組みをするなど,組織的に権威性を伴う方が有効です。家庭でも,加害者側の親とか先輩などと権威性を伴うルール作りをする方が有効です。

ただ,境界性/自己愛性パーソナリティ障害の場合,このような枠組みをかけられるのをひどく嫌がり,その隙間を探すようなことをしがちです。ルールは厳格に適用しないとなし崩しになる恐れがあり,適用する側の心理的な枠組みの強さが重要になります。
昨今問題になることが多いパワハラを含めて,ハラスメントの加害者側にはパーソナリティ障害やそれに近いパーソナリティ傾向をもつ人が多く見られます。被害を受けた時の対策や,うつ病などにならない予防のためにも,特徴を知っておくことは大切です。

パワハラの加害者側には,自己愛性パーソナリティ障害が疑われる人が多くの割合で含まれています。パーソナリティ障害と言わないまでも,自己愛に関する何らかの傷つきやユング心理学でいうコンプレックスが無意識レベルで働いていると考えられます。マスコミの取材などで,非常に横柄な態度や上から目線といった対応をとる人が多いのは,自己愛の傷つきの裏返しと推測されます。

DVを含むモラハラの加害者側には,境界性パーソナリティ障害が疑われる人が多いと言えます。これは,対人関係における不安定なイメージの中で,肯定と否定が極端に入れ替わったりするため,否定に入った時に人格否定のような形で相手を攻撃してしまうことによります。幼少時の親との関わりにおける傷つきや不安が背景にあることがほとんどで,期待はずれで責めている感じです。

対処の基本としては,どちらも理不尽極まりないという言動をとったりするので,できる限り心理的な距離をおけるように線引きやルール作りをすることが挙げられます。可能なら物理的に離れる方が安全ですが,難しい場合も多いので次回に詳しく書きます。
双極性障害に似た気分の浮き沈みをもつ人の中に,パーソナリティ障害をもつ人が含まれます。カウンセリングでも,初期には判別が難しいことが多いですが,経過をみていくと異なる特徴が見えてきます。今回は,「自己愛性パーソナリティ障害」を挙げます。

「自己愛性パーソナリティ障害」をもつ人も,対人関係に伴う気分の浮き沈みが大きいので,双極性障害との判別が難しいことが多くあります。自己イメージが肥大化しやすい点でも共通性が見られるので,判別は境界性パーソナリティ障害よりも難しいと思います。気分の変化を経過で見ていっても,波として感じられるところも似ていて,感覚的には少し違うのですが表現しづらいです。

違いとしては,ストレス状況における気分の落ち込みの様子と,それに伴う対人イメージのありようが特徴的です。自己愛性パーソナリティ障害の場合,相手に対する認知が他罰的で,相手のせいで自分が不利益を被っているという被害的な訴えが多くなります。双極性障害も,自己愛の傷つきがあると似ている場合がありますが,内省する力があり自分を改善しようとする感じがあります。

自己愛性パーソナリティ障害も,カウンセラー/セラピストに対して不安定な対人関係イメージをもちますが,信頼関係を築きづらい点で困難例の割合が多いと言えます。内省する力が乏しいので,なかなかカウンセリングが深まらないという経験をしがちです。
双極性障害に似た気分の浮き沈みをもつ人の中に,パーソナリティ障害をもつ人が含まれます。カウンセリングでも,初期には判別が難しいことが多いですが,経過をみていくと異なる特徴が見えてきます。今回は,「境界性パーソナリティ障害」を挙げます。

「境界性パーソナリティ障害」をもつ人は,対人関係で主に相手側のイメージが安定せず,理想化したり全否定したりという中で,気分が不安定になります。対人関係のエピソートが語れるぐらいの水準の人であれば,その内容と反応を聴いていけば判別はそれほど難しくないと思いますが,自分の気分に焦点が当たりすぎて混乱すると,エピソードがあまり出てこないので難しくなります。

基本的には,気分の変化を経過として見たときに,波としてイメージできるかどうかがひとつのポイントです。双極性障害の場合は,不安定になってはいても基礎に波がある感じはあります。境界性パーソナリティ障害の場合は,折れ線グラフのよう直線的な感じという違いがあります。その振れ幅が大きいため,経験が少ないとカウンセラー/セラピストでも翻弄されることが多いのです。

特徴的なのは,カウンセラー/セラピストに対しても不安定な対人関係イメージをもつ点で,境界性パーソナリティ障害の場合のカウンセリングは,困難例として報告されることが多くあります。カウンセリングの実際については,改めて書きたいと思います。
双極性障害(特にⅡ型)のような気分の浮き沈みが見られる人の中に,パーソナリティ障害と思われる人が一定の割合で含まれます。パーソナリティ障害が基礎にあって,症状として双極的な気分の波が生じているので,カウンセリングの方向性も異なります。

パーソナリティ障害というのは,大まかに書くと,主に環境的要因(家族関係など)を背景に健常なパーソナリティ(人格)形成が阻害されたことにより,対人関係や社会生活上の支障が生じている症状を指します。パーソナリティ障害というカテゴリーの中にも,たくさんの種類がありますが,双極性障害と特に混同されやすいのが,「境界性」と「自己愛性」のパーソナリティ障害です。

DSM-5という精神医学の診断基準では,パーソナリティ障害はA・B・Cの群に分類されており,「境界性」と「自己愛性」はどちらもB群に入っています。B群は,主に情緒面の不安定さという共通性でまとめられているので,気分の波も大きい場合が多いのですが,「境界性」と「自己愛性」は特に対人関係における認知の不安定さから,気分の浮き沈みにつながりやすいと言えます。

医療機関やカウンセリング機関に訪れる場合も,抑うつ気分などが主訴になることがほとんどなので,パーソナリティ障害が見逃されがちです。次回からは,「境界性」と「自己愛性」それぞれのパーソナリティ障害について,取り上げていきたいと思います。