こころオフィス・盛田~うつ病,双極性障害のカウンセリング

双極性障害に似た気分の浮き沈みをもつ人の中に,パーソナリティ障害をもつ人が含まれます。カウンセリングでも,初期には判別が難しいことが多いですが,経過をみていくと異なる特徴が見えてきます。今回は,「自己愛性パーソナリティ障害」を挙げます。

「自己愛性パーソナリティ障害」をもつ人も,対人関係に伴う気分の浮き沈みが大きいので,双極性障害との判別が難しいことが多くあります。自己イメージが肥大化しやすい点でも共通性が見られるので,判別は境界性パーソナリティ障害よりも難しいと思います。気分の変化を経過で見ていっても,波として感じられるところも似ていて,感覚的には少し違うのですが表現しづらいです。

違いとしては,ストレス状況における気分の落ち込みの様子と,それに伴う対人イメージのありようが特徴的です。自己愛性パーソナリティ障害の場合,相手に対する認知が他罰的で,相手のせいで自分が不利益を被っているという被害的な訴えが多くなります。双極性障害も,自己愛の傷つきがあると似ている場合がありますが,内省する力があり自分を改善しようとする感じがあります。

自己愛性パーソナリティ障害も,カウンセラー/セラピストに対して不安定な対人関係イメージをもちますが,信頼関係を築きづらい点で困難例の割合が多いと言えます。内省する力が乏しいので,なかなかカウンセリングが深まらないという経験をしがちです。
双極性障害に似た気分の浮き沈みをもつ人の中に,パーソナリティ障害をもつ人が含まれます。カウンセリングでも,初期には判別が難しいことが多いですが,経過をみていくと異なる特徴が見えてきます。今回は,「境界性パーソナリティ障害」を挙げます。

「境界性パーソナリティ障害」をもつ人は,対人関係で主に相手側のイメージが安定せず,理想化したり全否定したりという中で,気分が不安定になります。対人関係のエピソートが語れるぐらいの水準の人であれば,その内容と反応を聴いていけば判別はそれほど難しくないと思いますが,自分の気分に焦点が当たりすぎて混乱すると,エピソードがあまり出てこないので難しくなります。

基本的には,気分の変化を経過として見たときに,波としてイメージできるかどうかがひとつのポイントです。双極性障害の場合は,不安定になってはいても基礎に波がある感じはあります。境界性パーソナリティ障害の場合は,折れ線グラフのよう直線的な感じという違いがあります。その振れ幅が大きいため,経験が少ないとカウンセラー/セラピストでも翻弄されることが多いのです。

特徴的なのは,カウンセラー/セラピストに対しても不安定な対人関係イメージをもつ点で,境界性パーソナリティ障害の場合のカウンセリングは,困難例として報告されることが多くあります。カウンセリングの実際については,改めて書きたいと思います。
双極性障害(特にⅡ型)のような気分の浮き沈みが見られる人の中に,パーソナリティ障害と思われる人が一定の割合で含まれます。パーソナリティ障害が基礎にあって,症状として双極的な気分の波が生じているので,カウンセリングの方向性も異なります。

パーソナリティ障害というのは,大まかに書くと,主に環境的要因(家族関係など)を背景に健常なパーソナリティ(人格)形成が阻害されたことにより,対人関係や社会生活上の支障が生じている症状を指します。パーソナリティ障害というカテゴリーの中にも,たくさんの種類がありますが,双極性障害と特に混同されやすいのが,「境界性」と「自己愛性」のパーソナリティ障害です。

DSM-5という精神医学の診断基準では,パーソナリティ障害はA・B・Cの群に分類されており,「境界性」と「自己愛性」はどちらもB群に入っています。B群は,主に情緒面の不安定さという共通性でまとめられているので,気分の波も大きい場合が多いのですが,「境界性」と「自己愛性」は特に対人関係における認知の不安定さから,気分の浮き沈みにつながりやすいと言えます。

医療機関やカウンセリング機関に訪れる場合も,抑うつ気分などが主訴になることがほとんどなので,パーソナリティ障害が見逃されがちです。次回からは,「境界性」と「自己愛性」それぞれのパーソナリティ障害について,取り上げていきたいと思います。
双極性障害や類似した気質をもつ人の気分の波の中で,充実させたいと感じるのは躁的な気分の側にある時でしょう。エネルギーを消耗し過ぎないようにセーブするのが基本ではありますが,それはそれでフラストレーションにつながりやすいとも言えます。

気分の波が不安定になっているときは,それを安定させることが第一ですし,気分の波の安定を維持するのがセルフケアの基本です。それを踏まえた上で,上昇する波に乗っていく時期が,最もあなたのパフォーマンスが発揮できます。「波乗り」ができるようになってくると,波が下がり始める感覚がわかってきますので,抑うつ気分の側に入る頃までに区切りをつけるようにします。

デイトレードの話を聞くと,株価が上がり始めたら早めに売ることが基本で,初心者は上がりきるのを待って利益を増やそうとしてタイミングを逸して失敗するそうです。双極的な気分の波でも,上がりきる前に下がるときの準備をしておくぐらいでないと,調子がいいからもう少しと思っているうちに,気分が落ちて中途半端なところでパフォーマンスが上がらず止まりがちになります。

躁的な気分のいい状態を何とか維持しようと頑張って不安定にするよりは,抑うつ気分の時期が軽く済むようにエネルギーを補充しながら,次の上がる波でパフォーマンスを発揮できるように準備をする方が,全体的にみると充実した生き方につながりますよ。
双極性障害で,気分の波がうつ状態に入ったときの過ごし方は,うつ病の場合と似ています。心の力を抜くことが大切なのは共通しているのですが,双極性障害の場合は,気分を上げようと焦ってしまう傾向が,うつ病の場合よりも強いように感じています。

うつ病の場合は,何もする気が起きなくなることが多いですが,双極性障害のうつ状態は,結構やる気が保たれていることが多いと言えます。躁状態の時期にやる気がみなぎっているところから,気分の波が落ちていくので,やる気はあるのにパフォーマンスが上がらない感じが強いです。次のアイデアはあるのになかなか進まず,もどかしい想いが強くなり,焦りを募らせがちになります。

トランポリンを跳んでいるときに,意識して力を入れるとうまく跳べません。体の力を抜いて,トランポリンのバネの反動に任せるようにすると自然に体が上がります。双極性の気分の波に乗るコツは,これと似ています。焦って気分を上げようとすると,かえって気分の波が上がろうとするタイミングとズレてしまい,気分の波が不安定になって上がるはずの気分も上がらなくなります。

このコツは,感覚的に体得していくような側面が強く,頭では理解していても感覚をつかむまでには時間がかかります。自分の気分の波がどこにある時にどんな感覚で,自然な状態だとどう動いていくかが把握できると,心の力も抜きやすくなっていきますよ。
双極性障害のセルフケアは,自分の気分の波の状態を感じとることが第一になります。抑うつ気分のときは,比較的わかりやすいのですが,躁的な気分のときは,調子がよくなったと思うぐらいで気づきづらいことが多いため,そちらの方に注意が必要です。

躁的な気分の状態になると,いろいろとアイデアが浮かんだりテンションが上がってくるので,その勢いで心のエネルギーを使い続けていきます。心のエネルギーが高まっているというよりも,躁的な気分に引っ張られてあまり眠らなくても大丈夫になったりしているので,実際は本人の自覚以上に心のエネルギーを消耗していて,抑うつ気分のときにガクッと重いうつ状態になりがちです。

この重いうつ状態の予防のために,躁的な気分のときには心のエネルギーを消耗しすぎないような過ごし方が重要になります。うつ状態の後に躁的な気分に波が戻ってきた時期は特に,それまで活動できなかった反動で,取り戻そうと躍起になってしまうこともよくあります。心のエネルギーの消耗を抑えられれば,気分の波が抑うつ側に向かった際に比較的軽くでき,早めの回復が可能です。

躁状態にあることは,自分ではなかなか気づきづらいものです。専門家でなくても,家族など身近で見ている人は変化に気づきやすいので,サポートをお願いすることも有効です。自分で気づく力を高めるためには,継続的なカウンセリングが必要と言えます。
前回,双極性障害における「ハイドリーム」と「ロードリーム」について書きましたが,両方に「自己愛」が関連していると言えます。「自己愛」の揺れが,気分の波と連動していくので,健全な「自己愛」を育むことがカウンセリングでも重要になります。

「自己愛」という言葉から,自己愛性パーソナリティ障害を想起される方もいらっしゃると思いますが,パーソナリティ障害を意味しているのではなく,自分で自分の価値を認められる自信のような感覚だと思ってください。「自己愛」の傷つきがあると,双極性の気分の波は共通してみられるので,「自己愛性」「境界性」などのパーソナリティ障害にも関連する内容ではあるのですが。

「自己愛」の傷つきは「ロードリーム」に反映されるので,うつ状態の極の時期には,「自己愛」のどういう側面に傷つきがあるのかを「ロードリーム」に見出していくことが,その傷つきを癒し抑うつの症状を軽減することに役立ちます。傷つきの傾向を知ることで,その傷が刺激されないようにする「守り」が心の中につくられることで,気分の波を安定させる予防にもつながります。

「自己愛」の傷つきが深いほど「ハイドリーム」に逃げ込みたくなり,気分の波は不安定になるので,「ロードリーム」から気づく「守り」と,前回書いた「ハイドリーム」から気づく自己イメージを生きる方向性が,カウンセリングの両輪になっていきます。
双極性障害では躁状態の極とうつ状態の極の二極があり,深層心理的には二つの極の自己イメージを扱うことが大切になります。プロセスワークの,「ハイドリーム」の「ロードリーム」と呼ばれる無意識レベルのイメージにまで深めるアプローチも重要です。

双極性は,英語では"bipolar"と表記し,'bi'(2つの)+'polar'(極性)をもつという意味です。磁石のN極とS極のように二極性のものを指す単語ですが,この2つの極は両方あることでその働きが活きてくるわけです。双極性障害でも,うつ状態の自己イメージが「否認」されてしまうと,極性のバランスが崩れ,躁状態の自己イメージもうまく活かせなくなってしまうことになります。

躁状態の無意識には「ハイドリーム」があり,理想の自分やある種の万能感に浸っているような感覚が無意識レベルにあるので,そこにとどまりたくなります。そうすると,うつ状態の「ロードリーム」は「ハイドリーム」の世界をおびやかすものになり,「ハイドリーム」に逃げ込むようになります。このアンバランスさが,現実的な検討を困難にして,問題のある行動に走らせたりします。

「ハイドリーム」は文字通り夢(無意識)の次元なので,どんな「ハイドリーム」に動かされてるのかに気づきを向けて,自覚的に現実の中でその自己イメージを生きられるように,一緒に考えていくことも,カウンセリングの重要な方向性になっていきます。
双極性障害の気分の波を乗りこなす「波乗り」というのは,気分の波を全体的に俯瞰できる感覚を身につけることが重要です。本来はその感覚をもっているはずなのですが,気分の波が不安定になったことで見失っているので,取り戻すという方が適切ですね。

前回も,気分の波の振幅の中心に自分の基準を置くと書きましたが,うつ状態に対する不安や恐怖が強かったり,防衛機制の「否認」が働いていると,なかなか難しくなります。このため,カウンセリングの初期にはそれらをやわらげることが優先されます。振幅の中心というのは,気分の波を安定させる心の軸でもあるので,落ちついたらその振幅の中心を見つけていくように進めます。

気分の波は,振幅の中心軸にいることで,その方向や傾きの度合いがわかりますから,それに合わせて波に乗っていくイメージです。今,自分の気分の波がどうなっているのかがわからなければ,その波に振り回されてしまいます。うつ状態の極に向かうときにも,その波に乗っていけば,自然な波の流れでその極を越えて,早く中心側に戻っていく上向きの波に乗れるようになります。

うつ状態の極に向かう下向きの波の時期には,自分と向き合ったり今後の方向性を見直したりして,上向きの波の時に落ちついて最大限のパフォーマンスを発揮する準備ができます。下向きの波にうまく乗れてこそ,上向きの波にもうまく乗れるようになれます。
双極性障害は,躁うつ病とも呼ばれますが,気分の波があり,上がったときが躁状態,下がったときがうつ状態となります。躁状態の方が,思考や行動面の逸脱はあるものの,気持ちも高まり元気なので,躁状態の方に健康な自分の基準を置きやすくなります。

躁状態に健康な自分の基準を置くと,うつ状態は病的な自分と感じることになりますが,こうなるとうつ状態だけが注目されるため,「うつ病」と間違いやすくなります。双極性障害は,気分の波が不安定になることが中核的な症状なので,躁状態もうつ状態も自分の気分の波の中にあることを俯瞰するように,波の振幅の中心に自分の基準を置けるようになることが,とても重要です。

とはいえ,うつ状態の方に落ちていくような方向の波のときは苦しく,不安や恐怖が伴いますから,早く抜け出したいと思うのも無理もないことです。「否認」という防衛機制が働くのも,そういう自分を見たくない,それが自分の一部だと認めたくないための反応です。すると,何とか気分を落とさないようにとエネルギーを使ってしまい,安定のためのエネルギーが失われてしまいます。

多くの人が,この悪循環に陥って気分を安定させる方向に心のエネルギーを使えず,悪化させてしまいます。カウンセリングでは,うつ状態に落ちる不安や恐怖を受けとめながら緩和し,全体の気分の波の乱れを安定させるようにアプローチしていきます。