こころオフィス・盛田~うつ病,双極性障害のカウンセリング

仮面うつ病は,アレキシサイミア(失感情症)との関連が深く,カウンセリングのアプローチで比較的多い,感情に触れていこうとする問いかけは,あまり効果を発揮しません。感情を感じるのが難しいために身体化しているので,感情と向き合いづらいのです。

フォーカシングやプロセスワークといった身体的アプローチは,身体感覚として表現された無意識レベルの感情にアクセスするのに役立ちます。心身症の一種といえる仮面うつ病では,身体的な痛みを訴えることが多いのですが,頭痛が「頭が重い」という身体感覚で表現されるように,抑うつ感が背景にある痛みをていねいに感じていくと,「重さ」として表現される傾向が多くあります。

身体の「重さ」は心の「重さ」でもあります。一般的なうつ病でも倦怠感という形で身体の「重さ」が症状として表れ,朝起きようとしても身体が動かないほどになることがあります。「重さ」の身体感覚がイメージを伴ってくると,上から抑えつけられるようなプレッシャーを感じて,それに対する怒りや悲しみという感情を感じ始めるので,それをカウンセリング的に受容していきます。

アレキシサイミア(失感情症)は,子どものときに自分の感情を受けとめられず否定されたような経験が主な背景にありますので,感情をありのままに受けとめられる体験が重要です。それによって抑うつ感を感じられるようになると,症状も改善していきます。
仮面うつ病は,身体の痛みなどの症状として感じられることが多いのですが,それは心の痛みを身体で表現している心身症といえます。心身症は,診断基準であるDSM-5では「身体症状症」にあたりますが,ここでは古典的な用語の「心身症」と表記します。

不登校の子どもなどが,頭痛や腹痛を訴えるのも心身症の一種です。この背景に,仮面うつ病に近い抑うつ気分があることも多く,その気持ちが語られるように話を聴いていくカウンセリングが重要になります。また,周囲も子どもが訴える痛みを仮病のようにあしらうことなく,心の痛みを表現しているのだと受けとめるような関わりをしていくと,気持ちも語られやすくなっていきます。

心身症は,アレキシサイミア(失感情症)との関連が深いと前回書きましたが,自分の気持ちが聴いてもらえない,わかってもらえないといった経験を重ねた子どもは,感情表現が乏しくなります。自分のの気持ちを表現しないことが常態化すると,無意識化した感情は身体症状として表れます。そのまま大人になると,仮面うつ病になりやすく,聴いてもらえるという体験が重要なのです。

感情を出すことにトラウマ的な心の傷つきがからんでいると,カウンセリングで気持ちを聴かれることに抵抗感を示したりします。抵抗感も表現されづらいので中断にもなりやすく,箱庭やアートセラピーなどの視覚的な表現が有効なケースも多いと言えます。
うつ病の中には,抑うつ感の訴えが少なく,身体症状を中心に訴える場合があり,このタイプは「仮面うつ病」と呼ばれます。症状としては,頭痛や胃痛などの痛みとして感じられることが多く,内科的に診察を受けても異常がみられないものが当てはまります。

ストレスに起因する身体症状で,内科的疾患が明確でないものを「心身症」と呼び,「仮面うつ病」と類似しているので混同されがちです。「仮面うつ病」も「心身症」も,精神科等の診断基準であるDSM-5の正式な診断名ではないのですが,「心身症」では抑うつ気分が隠れているとは限らないので,「心身症」の中で強い抑うつ気分を伴うものが「仮面うつ病」と言ってもいいでしょう。

「心身症」はアレキシサイミア(失感情症)との関連が深く,自分の感情と向き合うことが難しい場合が多いため,「仮面うつ病」も難治ケースが多いと言えます。感情として表現するのが難しい代わりに,身体症状として表現していると考えられるので,無理に感情と向き合わせるよりも,身体の痛みを心の痛みとして聴いていき,ストレスを感じていることを共感していくようにします。

また,心と身体のつながりが失われていることが多いので,痛みなどの身体症状に焦点を当てるフォーカシングやプロセスワークを活用していくことも多くあります。身体症状を一緒に受けとめていくカウンセリングを通して,症状の捉え方が変わっていきます。