こころオフィス・盛田~うつ病,双極性障害のカウンセリング

様々なストレスにさらされることが多い私たちは,その反応として緊張状態になることが多いため,自律神経のバランスを崩しやすいと言えます。自律神経のバランスを整えるためには,リラクセーションを身につけることがセルフケアや予防に大切です。

リラクセーションとひとくちに言っても,その方法はとてもたくさんありますが,自律神経のバランスを整えるのに,カウンセリングでは古典的な方法とも言える,「自律訓練法」があります。「自律訓練法」は,ドイツの精神科医シュルツによって,1932年に創始されました。心身を瞑想のようなリラックス状態にして自律神経を整えることにより,精神症状の緩和にも有効に働きます。

「自律訓練法」の優れている点は,リラックス状態を身体感覚から導いていくところです。僕も緊張しやすいので経験がありますが,緊張しやすい人がリラックスしようと頭で思っても,なかなか難しいのです。手や足が「重たい」「温かい」といった自己暗示的な言葉を繰り返すのですが,リラックスしたときの体の状態に誘導することで,心をリラックスさせるという逆転の発想です。

「自律訓練法」の情報は,ネットでも書籍などでもたくさんありますが,声かけのトーンやリズム,タイミングなどは専門家から受ける経験を通して身につける方が確実です。自己催眠の一種でもあるので,応用を含めて活用していただきたいと願っています。
前回,緊張状態が続き交感神経が酷使されることで,食欲不振や不眠につながると書きましたが,これは副交感神経にうまく切り替わらないための症状です。ストレス等で生じる身体症状のほとんどは,自律神経のバランスが崩れたことによるものと言えます。

自律神経のバランスを整えるには,リラックスして副交感神経に切り替わるようにすることが重要です。絶えず緊張状態に置かれていることで,リラックスの仕方がわからなくなっているような状態ですから,リラックスするという感覚を取り戻すことが必要になります。重度のうつ病と違い,ただ休むというよりは,交感神経から副交感神経への切り替えがスムーズになることが目標です。

反対に,副交感神経から交感神経に切り替えることが難しい状態というのもあります。ここ数年,不登校の子どもたちに診断が出ることが多い,「起立性調節障害」が代表的なものです。朝起きて,なかなか体が活動状態にならないのが主な症状で,これはアクセルに例えられる交感神経に切り替わりづらくなっているためと考えられます。これも,交感神経の酷使が原因の場合が多いです。

自律神経のバランスを改善するためには,あなたに合ったリラクセーションを見つけることが大切ですが,そのひとつに「自律訓練法」があります。カウンセリングを通して体得していくことで,慣れれば数分でできるので,日常のセルフケアに活用できます。
自律神経について,最近はメディアでも取り上げられることが増えていますが,カウンセリング/心理療法の領域でも,自律神経のバランスは重視されています。自律神経について簡単に説明して,そのバランスを調整する大切さについて書いていきます。

自律神経は,交感神経と副交感神経に大別されます。交感神経をアクセル,副交感神経をブレーキに例えたりしますが,緊張状態では交感神経が優位に働き,リラックス状態では副交感神経が優位に働きます。緊張状態になるのは,動物の場合は狩りをするときや縄張り争いなどで戦闘か逃走するときに働くぐらいです。それ以外はリラックス状態にあるのが,生体としての自然な状態です。

人間の場合,勉強や仕事などで長時間の緊張状態を強いられます。その間,交感神経が働きっぱなしということになりますが,交感神経が働く時間は,本来的には1日2時間程だということです。それも,2時間も緊張を維持するという場面は,自然界の動物ではほぼないでしょう。人間は,交感神経をかなり酷使する環境にあり,バランスを崩しやすい状態に置かれていると考えられます。

交感神経と副交感神経はシーソーのように優位性が切り替わるものですが,交感神経を酷使すると副交感神経に切り替わりづらくなり,リラックスできず緊張状態が続くことで,うつ病でも多く見られる食欲不振や不眠などの症状につながるというわけです。
自律神経失調症について知っておくことは,うつ病の予防という点でも大切だと思います。それは,ストレスの蓄積によって生じやすい疾患という意味で近似しているので,ストレス蓄積による体のサインと捉えて,早めにケアしていくことが必要だからです。

自律神経失調症というのは,正確には医学上の診断名ではないのですが,ストレスによる様々な身体的不調が多岐にわたるため,休養やストレス緩和などが必要な状態であることを示すときに,疾患名として多く用いられています。その症状は,自律神経のバランスが崩れたことにより起こり,頭痛やめまい,息切れや動悸,胃腸の不調,腕・肩・背中・腰などの痛みなど,様々に表れます。

不眠も,自律神経失調症の症状のひとつで,うつ病の場合も不眠が多くの方に見られますので,不眠が含まれる場合は要注意です。また,「仮面うつ病」と呼ばれる症状は,あまり気分の落ち込みなどが見られず,身体的不調が自覚症状として前面に出てきます。この場合,自律神経失調症と区別することは難しいぐらい症状が類似しているので,身体症状が強い場合も要注意と言えます。

身体的不調が自覚症状であれば,内科などを受診して身体疾患がないかどうか確認することも大切です。検査などで特に異常がないのであれば,ストレスの蓄積でも身体症状が出ることを理解して,ストレスを緩和するようなカウンセリングが重要になります。
双極性障害や類似した気質をもつ人の気分の波の中で,充実させたいと感じるのは躁的な気分の側にある時でしょう。エネルギーを消耗し過ぎないようにセーブするのが基本ではありますが,それはそれでフラストレーションにつながりやすいとも言えます。

気分の波が不安定になっているときは,それを安定させることが第一ですし,気分の波の安定を維持するのがセルフケアの基本です。それを踏まえた上で,上昇する波に乗っていく時期が,最もあなたのパフォーマンスが発揮できます。「波乗り」ができるようになってくると,波が下がり始める感覚がわかってきますので,抑うつ気分の側に入る頃までに区切りをつけるようにします。

デイトレードの話を聞くと,株価が上がり始めたら早めに売ることが基本で,初心者は上がりきるのを待って利益を増やそうとしてタイミングを逸して失敗するそうです。双極的な気分の波でも,上がりきる前に下がるときの準備をしておくぐらいでないと,調子がいいからもう少しと思っているうちに,気分が落ちて中途半端なところでパフォーマンスが上がらず止まりがちになります。

躁的な気分のいい状態を何とか維持しようと頑張って不安定にするよりは,抑うつ気分の時期が軽く済むようにエネルギーを補充しながら,次の上がる波でパフォーマンスを発揮できるように準備をする方が,全体的にみると充実した生き方につながりますよ。
双極性障害で,気分の波がうつ状態に入ったときの過ごし方は,うつ病の場合と似ています。心の力を抜くことが大切なのは共通しているのですが,双極性障害の場合は,気分を上げようと焦ってしまう傾向が,うつ病の場合よりも強いように感じています。

うつ病の場合は,何もする気が起きなくなることが多いですが,双極性障害のうつ状態は,結構やる気が保たれていることが多いと言えます。躁状態の時期にやる気がみなぎっているところから,気分の波が落ちていくので,やる気はあるのにパフォーマンスが上がらない感じが強いです。次のアイデアはあるのになかなか進まず,もどかしい想いが強くなり,焦りを募らせがちになります。

トランポリンを跳んでいるときに,意識して力を入れるとうまく跳べません。体の力を抜いて,トランポリンのバネの反動に任せるようにすると自然に体が上がります。双極性の気分の波に乗るコツは,これと似ています。焦って気分を上げようとすると,かえって気分の波が上がろうとするタイミングとズレてしまい,気分の波が不安定になって上がるはずの気分も上がらなくなります。

このコツは,感覚的に体得していくような側面が強く,頭では理解していても感覚をつかむまでには時間がかかります。自分の気分の波がどこにある時にどんな感覚で,自然な状態だとどう動いていくかが把握できると,心の力も抜きやすくなっていきますよ。
双極性障害のセルフケアは,自分の気分の波の状態を感じとることが第一になります。抑うつ気分のときは,比較的わかりやすいのですが,躁的な気分のときは,調子がよくなったと思うぐらいで気づきづらいことが多いため,そちらの方に注意が必要です。

躁的な気分の状態になると,いろいろとアイデアが浮かんだりテンションが上がってくるので,その勢いで心のエネルギーを使い続けていきます。心のエネルギーが高まっているというよりも,躁的な気分に引っ張られてあまり眠らなくても大丈夫になったりしているので,実際は本人の自覚以上に心のエネルギーを消耗していて,抑うつ気分のときにガクッと重いうつ状態になりがちです。

この重いうつ状態の予防のために,躁的な気分のときには心のエネルギーを消耗しすぎないような過ごし方が重要になります。うつ状態の後に躁的な気分に波が戻ってきた時期は特に,それまで活動できなかった反動で,取り戻そうと躍起になってしまうこともよくあります。心のエネルギーの消耗を抑えられれば,気分の波が抑うつ側に向かった際に比較的軽くでき,早めの回復が可能です。

躁状態にあることは,自分ではなかなか気づきづらいものです。専門家でなくても,家族など身近で見ている人は変化に気づきやすいので,サポートをお願いすることも有効です。自分で気づく力を高めるためには,継続的なカウンセリングが必要と言えます。
うつ状態を,心が溺れそうになっているイメージに例えて,心の力を抜くことが大切と前回書きましたが,これがなかなか難しいと思います。うつ病になりやすい人は,頑張り屋さんが多いので,頑張らないで休むようなことが苦手な人が多いと感じています。

うつ病の人に「頑張れ」と励ましたりすることがタブーというのは,周囲の人への一般的な助言なのですが,もともと頑張っている人に頑張れと言っても,「これ以上何を頑張れっていうの?」という感覚になりますよね。基本的には,心のエネルギーが枯渇している状態なので「休みましょう」とカウンセリングでもお伝えするのですが,休むことに罪悪感があったりするので難しいです。

この場合,自己否定的なイメージが強いことが多くて,自分の欠点や問題点に焦点を当ててしまいがちです。それを何とかしようと頑張っているのですが,頑張っていることで欠点や問題点を直視しなくてすむという側面があります。休んでしまうと,自分の欠点や問題点が浮き彫りになってしまうので,うつ病で休職しているのに,家で勉強したりして心を休められない人は結構多いです。

子どもの頃,親や教師に欠点や問題点ばかり指摘され続けると,こういう心のクセがつきやすいです。欠点や問題点があっても,自分が受け容れられ,価値がある存在だと感じられる体験が必要なので,カウンセリングの関係性でもそれを大切にしていきます。
抑うつの方向に気分が落ちていくとき,「気分が沈む」という表現をしますが,身体感覚としても重くなり,水に沈むような感覚に近いように思えます。こういう状態から早く抜け出したいと思うのは自然な気持ちですが,かえって逆効果になりやすいのです。

「気分が沈む」感覚を,水に沈むというメタファーを使ってイメージするとわかりやすいと思います。抑うつから早く抜け出そうともがくのは,溺れそうになって手足をバタバタさせてしまうのと似ています。もがけばもがくほど,体は沈んでいってしまいますよね。心のエネルギーが低下している時に,抜け出そうといろいろもがいてしまうと,残り少ないエネルギーが枯渇してしまいます。

体には本来,浮力があるので力を抜けば水に浮くことができます。心にも本来,浮かび上がる力(自然治癒力)があるのです。そうは言っても,泳げない人は力を抜けばいいとわかっていても,恐怖心から力が入ってしまい沈んでいきます。浮いた状態を体験することで,力の抜き方もつかめてきます。うつ病でも,浮かび上がる感覚を体験することで,心の安定がつかめるようになります。

うつ状態は,心が溺れそうになっているイメージに近く,心の力の抜き方がわかれば,うつ病まで悪化させなくて済みます。心の力が抜ければ,気分が楽になって「心が軽くなる」ので,カウンセリングを通して,心の力を抜けるようにサポートしていきます。
ストレスなどがかかって精神的な不調が続くと,うつ病にまで悪化してしまう場合があります。また,抑うつ症状がある程度改善しても,思いグセというか心理的な習慣が変わらないままだと,再発する危険性があるので,セルフケアと予防について書きます。

うつ病にまで悪化する要因は様々ですが,何らかのストレスが重なっていることが多いです。ストレスとしての要因に心当たりがない場合は,脳の疾患や糖尿病などの身体的な要因,甲状腺の疾患や更年期などホルモン系の要因などもチェックした方がいいので,医師の診察が大切になります。ただ,ストレスを感じないようにしているうちに,鈍くなっているケースも多くあります。

HSPと呼ばれる高い繊細さをもつ人などは,もともとストレスを感じやすいので,感じないようにする習慣がついてしまう傾向があります。対処できない強いストレスが急に起きたときも,そうして対処しようとすることがあります。「心を感じなくしたい」と言ってカウンセリングに来られる方もおられますが,ストレスが蓄積することで突然重い症状が出る方が長期化しやすいのです。

ストレスを感じなくすることで,喜びや幸せを感じる感受性もなくしてしまいます。うつ病のセルフケアにおいては,ストレスを繊細に感じてこまめに対処し,カウンセリングを通して喜びや幸せを見つけられる方向に習慣をつけていくことが基本になります。